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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。
その五十七(2005年9月1日)

 豊かな自然と美しい町並み、そして城下町としての歴史を刻む勝山は、観光地というよりもむしろ、人々の暮らしが息づく生活の町。のれんを訪ね、人と出会い、言葉を交すほどに、この町の本当の魅力が見えてくる…。今回は、新しく勝山に誕生した文化施設のカフェと、2軒ののれんのお宅を訪ねてみました。

▲抹茶パフェ680円(勝山のほうじ茶とセット)
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出会いと交流が愉しいギャラリー&カフェ
【勝山文化往来館ひしお Cafe うえのだん】
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 梅雨が明けた7月、勝山の文化交流体験施設として6月にオープンしたばかりの「勝山文化往来館ひしお」を訪ねた。もともとの建物は明治時代中期に建てられた古い醤油蔵。外観はありし日の面影を残すように再現され、棟と棟をつなぐガラス張りの回廊からは、勝山の町並みを一望できる。

「うえのだん」は、「ひしお」内にあるギャラリー&カフェスペース。内部は、歴史を刻んだ太い梁や柱など古材があちこちで息を吹き返し、温もりのあるモダンな空間へとステキに変身をとげている。元醤油蔵のあった一番上の高台を、所有者であった清友家の人々が「うえのだん」と呼んでいたことから、馴染みがある呼び名がそのまま店名になった。簡潔でいかにも勝山らしい響きである。

「ひしお」は公共施設でありながら、運営するのは、地元勝山在住の「NPO法人 勝山・町並み委員会」の人々。「うえのだん」のカフェスタッフ、岡田聖子さんも生粋の勝山っ子だ(実は、のれんの制作者加納容子さんの娘さん)。
「やっぱり大好きな勝山で仕事がしたい。それは自分にとって譲れない部分」。将来は、できれば勝山で旅館の女将がしたいと夢はふくらむ。勝山のためになにができるか、どんなことをしたら訪れた人に楽しんでもらえるか、胸の中にはいっぱいの思いがあるようだ。

「勝山は、押しつけがましいところがなくて
おもしろい町じゃなあって言ってもらえて、
それがすごいうれしかった」。

「うえのだん」のオープンにあたっては、最新式のカフェマシンを導入。本格的なエスプレッソは、まさにプロ仕込みである。
「でも、地元のおばちゃんとかが来ると、聖子ちゃん、せっかくやるんじゃから食べるもんもおいたらどうなん? 親子丼とかどんな?って勧めてくれたりもして、それがおかしいんよ」と破顔になる。
 現実にこの発想を受け入れるのはちと厳しいものがあるかもしれない。でもそんな風に、ある意味ボーダレスにコミュニケーションが成立するというのが、のんびりとしたこの町ならではの愉しさである。

 都会のモダンなカフェにありがちなスノッブな空気はここにはない。分け隔てなくどんな客でも受け入れてくれる。それは、ここに住む人たちが自分たちの町のために構想を練り、勝山らしさをいっぱい散りばめてつくった共有の場所だからだと思う。
居心地がいいのは歴史を刻んだ木の温もりのせいだけじゃないだろう。迎えてくれるこの町の人たちのやわらかな感性のおかげなのだと思う。

▲「うえのだん」スタッフの岡田聖子さん(左)と近藤紘子さん

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浮世絵風の粋な配色 【三谷邸】
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 ご主人の弘さんは、今は自由な隠居の身。だがかつては、「マルミ会館」という名のパチンコ店経営を生業としていた。昭和30〜40年代は、庶民の暮らしが活気にあふれ、パチンコといっても今のようなギャンブル性はなく、町の男衆が寄り合う健康的かつのどかな娯楽の場だったそうだ。隣りには屋台風の食事処ももうけ、こちらもよく繁盛した。そんな思い出を、たまたま帰省していた次女の陽子さんが話してくれた。

「あの頃はね、夢中で遊べる小さな路地がいくつもあったし、ホタルやメダカも今よりも断然多かったよ」。

 記憶の中には、今よりももっと素朴で贅沢な人と自然とのふれあいが詰まっている。一つひとつ、引き出しから宝物をひっぱりだすように思い出話を語るこの町の人たちに会えばすぐにわかる。皆それぞれ形は違うけれど、胸の奥には町に対する愛着があふれている。昭和30〜40年代のこの場所は今とは違っていただろうか…。出来ることならタイムスリップしてみたい、そんな気分になった。

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秋色のパッチワーク【後藤邸】
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 無駄なもののない、すきっとした檜の格子戸。堂々としたファサードに、5枚はぎの大柄なのれんがよく似合う。出迎えてくださったのは、娘の博美さんと 近くに住むお姉さん。もともとは魚屋さんを営んでいたが、平成6年に店をたたみ、現在の住まいに建て替えたそうだ。

 3枚目になるというのれんは、渋い茶色とえんじ色を組み合せたパッチワーク風の図柄。気に入っていたブラウスのプリント模様をヒントに、加納さんにリクエストしたという。
 実は訪ねた時、これとは違う、上がり藤ののれんがかかっていたのだが、新作を見せてもらえないかと図々しく申し出てみたところ、「ちょっとアイロンかけるので待っててね」とここころよく承知してくださった。厭う様子もなく、お茶菓子まで添えてくださる心遣いには恐縮至極…である。

 夏の昼下がり、パリっと糊のきいた麻のれんが軽やかに揺れる様はさすがに気持ちがいい。人に対しても、ものに対してもていねいなその暮らしぶりに触れるたび、気持ちのいい風をもらったたように、心がふわっと爽快になる。

【三谷邸】 【後藤邸】

■勝山文化往来館ひしお
町内の旧家から寄贈された古い醤油蔵(明治時代中期)を可能な限り保存し、再生してオープンした文化交流体験施設。建設は旧勝山町が手がけ、運営は地元の民間企業人や住民らで組織される「NPO法人勝山・町並み委員会」が行う、いわゆる「公設民営」のスタイル。ホールやギャラリーを備えたパブリックなスペースであると同時に、「食べて語らう」を中心にしたパーソナルな文化交流を目的としているのが特徴。公共施設としては異例ともいうべき予算をかけた厨房とカフェスペース(うえのだん)が光る。この秋には、神戸「ジャン・ムーラン」の元フレンチオーナーシェフ・美木剛氏を招いての「移動レストラン」を開催。今後はさまざまな交流メニューと絡めながら、国内外の優れたアーティストの作品を紹介していく予定。




2005年9
月1日


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