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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。

その六十一(2006年9月11日)
「酒造りは米作りから」
〜岡山が誇る酒造好適米、雄町米の生産者を訪ねて〜


瀬戸特別栽培米雄町研究会のみなさん
山田錦や五百万石など、酒造好適米の中でも、深く力強い旨味を醸し
すことで知られる酒米の帝王「雄町」。栽培の難しさから一時姿
「幻の米」
と化したものの、蔵人たちの熱い思いに支えられ、発
祥の地、ここ岡山でも
栽培の取り組みが活発化してきている。今回、米
どころとしても知られる赤磐
郡瀬戸町で、栽培に励む生産者グループを
レポートしてみました。

 「草丈102、109、98…。幼穂(ようすい)4ミリ、
2ミリ、2ミリ…、葉色28.1、ウンカも今のところ心配なし。
15日に堆肥20キロ…」。

 
太陽が照りつける炎天下の中、営農指導員が各生産者の田んぼを回
り、生育状況を丹念に測定していく。農薬や除草剤の使用を極力抑えた
米づくりは、病害虫が広がってからでは手遅れになることも多い。絶え
ず手をかけながら、小さな変化も見落とさぬよう、収穫までの経過を慎
重に見守っていく。

 
「特別栽培農産物生産ほ場 品種 雄町」。
一面に広がる田んぼの中で、ここが特別に選ばれた場所であることを、
その立て看板が伝えてくれる。一般の食米に比べて苗が大きく、7月を
過ぎる頃からぐんぐんと草丈が成長するそのたくましい姿は、まさに他
とは違う「酒米の帝王」の風格だ。

2〜3ミリほどに成長した幼穂(ようすい)。9月初旬には穂が揃う。

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 良質の雄町米を育てる
豊かな水系と肥沃な砂壌土 ********************************************************************

岡山県の東南部に位置する赤磐郡(あかいわぐん)は、吉井川・砂川
の両岸に広がる南北に細長い地域。特に砂川の両岸に開けた沖積地帯
は、良質米の産地としても知られ、ここから出荷される岡山特産の朝日
米やヒノヒカリは、県下でもAランクを誇る。

 
昭和63年ごろから、高品質雄町米の取り組みが始まり、この地
区だけで、現在約50戸の農家が、県内外の蔵元と契約を結び、年
間3000俵あまりの米を出荷している。

 
「瀬戸特別栽培米雄町研究会」は、今年2006年にJA あか
いわ瀬戸が事務局となって結成された雄町米の生産者部会だ。メンバー
は現在7名。経験豊富な篤農家の中でも特別に選ばれた、いわば精鋭集
団である。
 
 このグループに与えられたミッションは、日本酒の中でも高級酒の原
料となる高品質の雄町米を栽培出荷すること。全国的にもその名が知ら
れる名門酒の蔵元数社と契約を結んでいることからも、その期待の大き
さがうかがえる。
 
「雄町はどこでもできる品種ではなくて、適地を選ぶんです。土壌条件
や水質、気候風土はもちろん、水の駆け引きが自由にできるところでな
いと栽培が難しい。生育に合わせていつでも管理できるくらい、水系が
豊富であるということが重要なんです」と女性営農指導員の高橋幹子さ
ん。

 
とりわけ瀬戸地区は、花崗岩の崩壊した砂壌土である点や、霧が発生
しやすいことなど、雄町にとっての好条件が揃っている。

 
しかし、雄町が穫れる地域はまだまだ狭く生産量も限られる。雄町米
発祥の地、岡山でさえ、この米を100%使って酒を造ることので
きる蔵は少ないのが現状だ。




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ごまかしの効かない雄町は
生産者泣かせ、蔵人泣かせの米
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 実際の栽培も、生産者にとっては苦労の連続。病害虫に弱く、その上
農薬を嫌う。なんといっても、草丈が130センチ以上にもなるため倒
伏しやすく、台風の影響を受けやすい。
 
「栽培にも手間がかかるけど、刈り取りの時が特に神経を使うなあ。
(長捍種であるために)普通にコンバインがひきあげられない。そこで
回転をあげると、今度は熱をもって発酵してしまう。乾燥もなるべく
ゆっくり低温にしてやらんと、胴割れをおこす」と生産者の一人である
長田孝之さんは話す。
 長捍で大粒の米を実らせる雄町は、なにより、それを支えるしっかり
とした茎をつくることが大事だ。そのために「昔は、山のものを入れた
り、厩肥やおがくずの堆肥を入れたりして土づくりをしよった」と会長
の岸本実さん。昔ながらの循環型の有機農業が、雄町のような品種には
まさに理想だ。
 そして米作りと同様、酒造りの方も簡単にはいかない。米自体が柔ら
かく溶けやすいため、浸漬にはとりわけ細心の注意を要する。とにか
く、雄町はごまかしが効かないと、蔵人の誰もが口を揃える。
 米づくりにしても酒づくりにしても、時間と愛情を重ねて大切に育ま
れる雄町。それがまさに作り手の心をとらえ、ロマンを駆り立てるのか
もしれない。
 
「赤磐管内でも、特にこの瀬戸地区の雄町生産者はこだわりが強い方
ばっかりですよ(笑)。みんな一人ひとり自分なりの農業哲学を持って
いて、普通に誰かの真似はしたくないっていうタイプ。失敗しても、な
にくそって立ち上がる探究心の旺盛な人が多いですね」と高橋さん。
 先祖代々この地に伝わる、もともとの農業遺伝子のレベルも高いのだ
ろう。岡山の特産品である見事な白桃や、一房5000円もするマス
カット・オブ・アレキサンドリアなどの超高級果物を連想していただけ
ればわかるだろう。「芸術品」ともいえる農産物を作り育てる職人たち
が、瀬戸地区をはじめ、赤磐周辺にはたくさんいるのである。




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雄町米の酒はおおらかで
「健康的なすっぴん」の魅力
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 心白が大きく、しっかりとした旨味を醸し出す雄町米は、酒にする
と、
大きく力強い稲の姿そのまんまの、おおらかで深い味わいがする。
山田錦の酒を「華やかでスマートな都会美人」に例えると、雄町はまさ
に「健康的なすっぴん」の魅力だ。
 
生産者泣かせ、蔵人泣かせの米だからこそ、その特質を十分に引き出
し、最高のものができたときの喜びもひとしおなのだろう。
 
「お金だけじゃあ、この米は作れん」。生産者の一人、岸本静夫さんは
言う。会長の岸本さんも「最後にみんなで笑えるようなええ米を作りた
い。そしてええ酒ができてくれた時にはやっぱり嬉しい」と話す。
 雄町米の収穫は、例年10月の中旬頃。
大粒の米がたわわに実る姿は、まさに「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
の言葉通りだという。


前列左から、JAあかいわ瀬戸基幹支店、営農指導員の佐藤克彦さん、
同じく営農指導員の高橋幹子さん。後列左から「瀬戸特別栽培米雄町研究会」の生産者、岸本静夫さん、長田孝之さん、会長の岸本実さん。





2006年9月11日


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