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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。

その六十二(2006年12月1日)

「のれんギャラリー」


勝山町並み保存地区を彩る「のれん」を訪ね、勝山人の素顔の魅力を
お届けしている「のれんギャラリー」。今回は、通りの一番北、旭川の川上
にあたる「城内」のお宅を訪ねてみました。現在の真庭市役所があるこの
地帯は、かつて二万三千石の三浦藩が治める勝山城があったところ。古い
ものに親しみ、こだわりと誇りをいっぱいに秘めた勝山人。「のれん」の向こう
にあるそんな住まい手たちの歴史や暮らしぶりをのぞいてみました。

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 下宿屋さんも兼ねた、懐かしい昭和の食堂

春樹食堂
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 春樹食堂という名の通り「春の木」をモチーフにしたシンプルなのれん。
デフォルメされた幹に、新緑のお山を逆さにのせたようなデザイン
が、なんとも
大胆でユーモラス。
見ているだけで、のんびりとした春の気分に包まれる。

 その昔、店の裏手が旭川の船着き場になっていたこともあり、もともとは
「はるや」という屋号で旅館を営んでいた。富山の薬売りや、山の
仕事に
従事する「雑木師さん」たちの定宿としてもにぎわっていたそうだ。
 海上交通が廃れてから後に、現在食堂に転身。店内の雰囲気もその
頃とあまり変わっていないのか、テーブルやイスなどからは懐かしい昭和の匂い
が伝わってくる。ちなみに今の屋号は、先代がその頃流行って
いた映画『君の名は』
の主人公の名にあやかって改名したもの。「親戚
からは、やめてくれえと反対する
声もあったそうなで」と、ご主人が愉
快そうに話してくれた。

 食堂からドアを隔てた隣に、なにやら自慢の奥座敷があるというの
で、
のぞかせてもらった。古い民家から集めてきたというすどや箪笥、
松竹梅で
作られた珍しい自在や古道具などは、すべてご主人のこだわ
り。部屋の中
にはなんと囲炉裏が切ってあり、ここで炉端焼を楽しみな
がら、うまい地酒を
楽しむという趣向らしい。むろん客からの予約が入
れば、夜はそのまま居酒屋
にもなる。

 もともと、昔ながらの町家には、店の横に、外からの客をもてなす「店の間」と呼ば
れるスペースがあった。今も建物の中にその名残を留
めるお宅も多い。
顔見知りがしょっちゅう出入りする町家地区ならでは
の文化なのか、職と住を完全に
分離せず、人が来れば、いつでもお茶を
出しておしゃべりできる空間が暮らしの中に
確立されているのだ。そ
れが勝山保存地区に住む人たちのもてなしの原点でもあり、
他にはない
不思議な魅力になっている気がする。春樹食堂の奥座敷もまさに、遊び
心満載のフレキシブルな「憩いの間」といったところだ。

  この春樹食堂には、実はもうひとつの顔がある。なんと今では珍しくなった下宿屋
さんを営んでいるのだ。今は、勝高野球部の男子学生2
人を預かっているそう。
「40年もやってるけど、(町内で)まだ続いているのはうちぐらいかな。朝はお弁当をつく
って送り出すんですよ(笑)。宿屋をやって
いたから部屋はあるし、まかないつきなので、
ここなら安心と思っても
らえるみたいで」。来年も、蒜山から勝山高校に越境入学して
くる子を預かることになっ
ているらしい。年々子どもの数は減っているけど、望む人がい
る限り、
勝手にやめるわけにもいかない、とご主人。看板はあげてないけれど、目にみえ
ないところで、人と人とのふれあいを大事にしている。
 他所の子供たちの世話を引き
受けてくれる下宿屋さんが今も存在する
町。人の温度も、きっと昔から変わっていない。


春樹食堂の春樹さん夫妻



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 古いものを生かした、暮らしの演出

牧野石材店
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「のれんがとっても好きで、今かけているので4枚目。原石が宙に浮いたようなイメージで
作ってもらったんですよ」。大胆に描かれたキュー
ブの形。まさに一目でわかる石屋さんの
のれんだ。
 このほかに、おひなまつり用のちりめんののれんや、くちなしで染めた麻ののれん、家紋
入りのものなど、奥から出して見せてくださった。
どれも茂子さんが「こんな感じに」と加納
さんにリクエストしたもの。
色褪せも含め、一枚一枚愛着の染み込んだものばかり。




玄関から中におじゃまして、最初に驚いたのが、三和土スペースのしつらいの美しさ。
きれいな小石を敷き詰め、グリーンや和の明かりを
使ってコーナーを演出していたり、
飾り棚や明かり採りの小窓に、動物
の石細工や小物をかわいらしく並べていたりと、
各所に細やかさが行き
届いている。なんといっても住まいそのものが、昭和初期の和風
ロマンティック。
天井の造りといいアンティーク風のすりガラスといい、昔の職人さんが
寸と尺でこしらえた、古き良き日本のスイートホームだ。
「もともと骨董品や古いものが大好きなんですよ」と茂子さん。
水害で
家を流され、現在の場所に新築することになった際も、昔のままの風情がいいと、
わざわざ古い部材や建具を入れて、建て替えてもらったとい
う。



玄関に明かり採りの小窓があるモダンな造り
グリーンや小石をつかってしつらえた和のコーナー。明かりの奥のつい立ては、古い建具を使って、茂子さん自らがこしらえたもの



 牧野石材店は、保存地区に2軒残る石屋さんのうちの一軒。
御用石屋として仕えた初代から4代目を数える。昔と違い、今は機械化の時代。
けれど、石塔など細かな細工が要求されるものは、昔ながらの技で手作業で仕上げ
ている。石も産地によって様々な個性があり、磨いた時に美
しく、粘りがあって、
水を吸わないのが良い石の条件だそうだ。
「今は外国からの石材も多くなったけど、
うちは、地元の良質な石を大
事にしたい。真賀温泉で採れる"青御影”という石が
あって、これはとてもい
い石なんですよ」。 
 おひなまつりの時には、動物の細工ものをたくさん作って披露する。
「可愛い」と毎年
観光客に大好評だそうだ。手のひらに乗る親ガメ子ガ
メ。遊び心いっぱいの石のアートだ。



昔ながらの木造家屋。手入れの行き届いた玄関先に茜色ののれんが美しく映える 親ガメ子ガメのほかに、大理石できた象さんもありました


2006年12月5日


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