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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ
話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていき
ます。

その六十六(2007年12月1日)



 男たちの熱気で沸き返るけんかだんじりから一週間後、興奮の余韻覚めやらぬ勝山の保存地区を訪ねた。

 高く抜ける秋空の下、力強いロックソーランのビートが鳴り響く。ちょうどこの日、町は、
恒例のもみじまつりの真っ最中。あでやかな衣装を身につけた踊り連が、鳴子を打ち鳴らし街道を練り歩く。
道沿いはカメラを持った多くの見物客であふれ返っていた。

 
町の無料休憩所『顆山亭』をのぞいてみると、今年も応援する会の男たちが蕎麦づくりに励んでいた。
いつものごとく和気あいあいとなにやら愉しげ。他愛もない冗談を交わしながら、町の「おじさん連中」がそれぞれの
担当に分かれ、こねたり、伸したり、切ったりをこなしている。

これは「蕎麦打ち」と称し、応援する会が、毎年住民や観光客へのもてなしと資金作りを兼ねて行っている
活動のひとつ。今年でもう10年目を数える。


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 地元でも好評! 本格蕎麦
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 さっそく早めの昼食を決め、自慢のざる蕎麦を注文してみた。

今年は、地元北房産の石臼挽粉を使った二八蕎麦。細めに打ち上げた麺はほどよくコシがあり、
最後までするする〜っと喉を通る。2ヶ月前から仕込んで寝かせたかえしに昆布とかつお出汁で作ったという
つゆも本格的。最初はまったくの試行錯誤で始めたそうだが「年々確実に腕を上げている」らしく、その美味しさは、
地元住民にもたいそう評判なのだ。



 応援する会は、正しくは「町並み保存事業を応援する会」という名のもとに、
平成8年に町の有志によって発足した。

 保存地区内の伝統的行事の継承と発展に寄与し、活性化のためのアイデアを提案するというのが
その活動の趣旨。一般の観光事業や町おこしの類いとは少し違い、主役はあくまで自分たちだから、
客寄せのために手をこまねいてなにかをするというものではない。

 生活の中から自然に生まれるもてなしの心や、自分たちの町を少しでもよくしようとする誇りと使命感が、
いわば活動の原動力。「自分たちの住む町じゃから楽しゅうしょうや」が、合い言葉だ。

 
ちなみにメンバーは、保存地区内に住む40〜50歳代の大人たち。
会社員、造り酒屋、床屋、小売業、染色家と個性豊か。いうなればこの会は、勝山をこよなく愛す近所の
おじさん連中が結成した、町のお助け部隊というか、ハッピーな勤労奉仕集団といったところ。
実際には、用水脇で涸れていた「つるべ井戸」再生事業をはじめ、毎年3月のお雛まつり、
町づくり見学の研修旅行など、実にさまざまな活動を行っているのだ。


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 酒を囲んでわいわいと…
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 さて、11時の営業開始とともに、顆山亭もにわかに忙しくなってきた。
入れ替わり立ち代わりお客さんがのれんを分けて入ってくる。エプロン姿の男たちが、
店の中を立ち回る姿がなんともほほえましい。そして閉店時間の午後2時。
蕎麦の方も無事完売となった。

 
そして、このあとは、応援する会恒例の男たちによる慰労会(という名の飲み会)へなだれ込む。

普段からしょっちゅう集まっては酒を飲んでるらしく、セッティングも実に素早く手慣れたもの。
大ざるに盛られた蕎麦に、銘々が家から持ち寄った食材があっというまに集まり、
鍋や一品料理がテーブルの上に出揃う。もちろん真ん中には、皆の愛してやまないこの町の地酒…。

そうこうしてると、どこからともなく「まあ座って一緒に飲もうや」と、うれしいお声がかかる!
お言葉に甘えて、私もちょっとだけ参加させてもらうことにした。



 それにしても、こんな風に町の中に憩いのフリースペースがあり、仲間たちが集まっては堂々と
昼酒を飲み合うなんて、このシチュエーションがなんともうらやましいではないか。

ふらっと遊びにきた人間を、お客様扱いするわけでもなく、かといってよそ者扱いするわけでもない。
勝山の人のしなやかで心やさしい素顔は、ちょっと足を踏み入れたこんな出会いの中にこそ隠れている。

相手に気を遣わせないもてなしの術を心得ているのだろう。
自分たちが楽しむと同時に、外から来た人をも自然体で受け入れながら、居心地のいい時間を共有し合うのだ。

地元の人の目もあたたかい。そんな彼らの様子を、通る人通る人、
また始まったかいとでもいうように必ず声をかけていく。
お年寄りも高校生も幼稚園児も、この町ではみんなが顔見知り。まるで家族のようなのだ。
そこには職業も肩書きも年齢も、いっさいの壁がない。
昔ながらの地域コミュニティが、今もそのまんま残っている。


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 人が主役の町づくり
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 この光景が本当に勝山だなあと思う。常に周りには人がいて、声をかけあい、
なんだか暢気で楽しそうに暮らしている。勝山に住む人々にとっては、特別でもなんでもない、
これがあたりまえの日常。人間関係の希薄さからくる孤独とかさびしさといったものとは、まるで無縁だ。

 
気のいいおじさんたちに囲まれて、食べろ食べろと進められ、お腹もどんどんふくらんでいく。
知らず知らずのうちに、すっかり楽しませてもらった。ああ、また、勝山の人たちに借りができてしまったなあ〜。

ちなみに次回の「蕎麦打ち」は、12月の大晦日。
顆山亭に立ち寄れば、陽気なおじさんたちの打つ自慢の年越し蕎麦を味わえるかもしれませんよ。



顆山亭(かざんてい)

勝山町並み保存地区内にある無料の休憩施設。
古い空き家を「町並み保存事業を応援する会」のメンバーが、
内部を床から張り替え改修した。

取材・文/三村佳代子


2007年12月1日


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