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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。

その六十九(2008年9月1日)
ものづくりってこんなに楽しい!

「こども ものづくり ワンダーランド」 in
           勝山文化往来館「ひしお」


勝山在住の作家やコーディネーターが、さまざまな分野のアーティストと手をつなぎ、子どもたちのためのワークショップを開催。黙々と手を動かし、夢中になって自分の作品づくりに取り組む子どもたち。周りの大人たちもびっくりの、その楽しい現場をレポートしてみました。取材・文/三村佳代子

 夏休みもそろそろ終盤に近づいてきた8月19日。勝山文化往来館ひしおで開催されている、「こども ものづくり ワンダーランド」を訪ねてみた。

 この催しは、8回シリーズで行われる、子どものためのワークショップ。ひしおが行っている、アーティスト・イン・レジデンス事業(国内 外の作家が施設に一定期間滞在し、創作活動を行うもの)を土台に、アーティストの指導のもと、子どもたちにものづくりの基本技術や楽しさを伝えるのがその目的だ。

 すでに、地元染織家・加納容子さんによる「Tシャツアート」や、黒田善子さんを迎えての「モラ刺繍」、そのほか陶芸や詩作などが行われ、プログラムを見るだけでも、本格的かつ充実の内容。

 さて、この日のプログラムは、岡山県美咲町にある家具と手織りの工房「アーツ&クラフツビレッジ」から、染織家・原田豊美さんを迎えての「さをり織り」。会場にセットされたのは、足踏み式の手織機10台。2枚そうこうの最もシンプルな構造なので、子どもの手足でも充分に操作が可能だ。それでいて、初心者でも本格的な織物(平織)が楽しめる。


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 心のおもむくままに

 好きに好きに織る

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「さをり織りは、最初に織り方だけ伝えて、あとは口をはさまないことが大切。一般の織物とは違って、さをり織りは自由に糸を用いて織っていいんです。失敗してもそこから面白い模様が生まれたり、新たな発想につながるチャンスにもなったりしますから」。

 お手本もマニュアルも一切なし。教えなくても、知らぬ間に自分でも気がつかない能力を引き出されるのが、さをり織りの面白さでもあり、醍醐味であるらしい。
 さて、気になる子どもたちの実際の創作の様子。迷いつつも、みんな 自分の好きな色の糸を選び、その表情は真剣ながらもいきいきと楽しそう。

 参加者の中で、最年少の5歳の女の子。最初は手と足がおぼつかない様子だったのに、あっというまにコツをつかみ、機織りのリズムをマスターした。配色もとても豊か。明るく健康的なチェックは、どこか異国の香りすら漂う。周りで見ていた大人たちも「すごい」のひと言。

 あらかじめ張ってある黒の縦糸に、同系色の紺の横糸を選んで、シックな色調で織り進めていた6歳の女の子は、大人顔負けのモダンなタペストリーを仕上げた。カーキやピンクを配した横縞が、なんともおしゃ れでイキだ。「そうそう、子どもの方が色彩感覚が優れてたりしますよ」と、にこにこ顔の原田先生。


 自由を楽しむ「さをり織り」は、使う糸も多種多様だ。コットンはもちろん、キラキラ光るラメ糸、あったかみのあるウール、ループやスラブ、さらにくず糸やわけのわからない(?)切れっぱし…。組み合わせは自由自在。基本はなんでも使っちゃえ、なのだ。

 
一本通すところに二本通しても、これがかえって味になる。逆に一本抜けても間違いではない。アクセントをつけたいときは、そこだけ別の素材を、手で糸の間にからませていく。横から糸がはみ出してもノープロブレム。

 
「さをり織りは、その人自身がそのまま作品に出るんです。布を織るのではなくて、自分を織る作業そのものといえますね」と原田さん。その言葉通り、みなそれぞれに思いのままに自分の世界を作り上げていく。本来プリミティブなものづくりには、制限時間もルールも一切ないのだ。子どもも大人も、マイワールドにどっぷり浸れるさをり織り。なんて楽しい時間だろう。
 
 
言い換えるなら、「これこそがアートセラピーの姿」とも。実際、原田さんは、作家活動と並行して、知的障害児を対象にした、さをり織りの指導も行っている。
「突然、びっくりするような模様が現れてきたりするんですよ。無心になることで、その子の持っている潜在能力、脳の中に描いているイメー ジが手を通して浮き出てくる。この不思議にはいつも驚かされます」。

 
出来あがった織物は、世界にひとつだけのオリジナルアートだ。しかもどれもが生活の中でちゃんと使える実用品。ワークショップを終えた 後の、子どもたちの自信にあふれた表情が印象的だった。

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 手を使って、無心に

 ものをつくる喜びを

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 このイベントを企画したひしおのスタッフ、小林孝(たか)さん(NPO法人勝山・町並み委員会理事)も、子どもたちのワークショップには意欲的だ。

「何時間かけてでもやりたい、それだけ夢中になれるなにかを子どもたちに体験してほしい。同時にものづくりを通して、人間の手ってすばらしいんだ、ということも伝えていきたいですよね」。
 
そのためには、経験と感性あふれるアーティストの協力が欠かせない。質の高いアート、プロならではのものの見方に触れることは、子どもたちにとって大いに刺激になるという。

 
自分の手でものを作り上げ、生活の中に美しく取り入れる。この、クオリティオブライフの確かな手応えに、子どもも大人も夢中になる。作る楽しみ、使う楽しみを、改めてこのプログラムで教えられた気がした。ちなみにこの催しはあと3回を残し、12月まで続く予定だ。詳しくは、勝山文化往来館ひしおのHPを。
http://www18.ocn.ne.jp/~hishio/

    
■原田豊美さんプロフィール
手織・手紡ぎ工房アトリエ夢木主宰(アーツ&クラフツビレッジ内)。
染織家として作家活動を行うかたわら、さをり織りや手紡ぎの体験教室を開催。また、障害者への指導やイギリスでのさをり紹介企画なども行っている。さをりリーダースコミッティ会員。
アーツ&クラフツビレッジ
http://www.cyerry.net/~arts-crafts/
※「さをり織り」…作家・城みさをさん(手織適塾SAORI主宰)が57歳の時に創始した織り。キズやムラを気にせず「好きに好きに」思いのまま織る。簡単な操作で、子どもから大人まで誰もが楽しめ、今や世界40カ国にまで広がっている。

2008年9月1日



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