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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。

その三十四(2003年4月1日)




3月もなかばを過ぎると、仕込み作業もそろそろ終盤。
この頃になると、蔵人たちの肩の荷もほんの少し軽くなる。
この時期、主役はなんといってもできたての新酒だ。
全国各地の蔵元では、地元の人々や日本酒ファンを招いて、新酒のふるまい行事が催される。


▲ひょんなお面をつけたお酒の神様「松の尾の命」が道化を演じる。掛け合い漫才、歌謡曲、時事問題…なんでもありの多芸ぶりに一同大爆笑

 ここ御前酒でも、蔵元主催の恒例「蔵開き」が今年も盛大に繰り広げられた。
 招待されたのは、特別限定頒布の純米吟醸しぼりたて(その名も「蔵開き」)を事前予約したお客さんたち。とはいえ、御前酒ファンにとっては新酒を思う存分楽しめる年に一度のイベントとあって、定員360名のところ、実際には500名もの申し込みがあったそうだ。

 受付開始の12時に蔵元のある勝山に着くと、会場周辺は 、すでに人、人、人…。
あいにくの雨にもかかわらず、多くの来場者に、蔵の人たちも大忙しの様子だ。

 会場外に設けられたテントでは、5点的中法によるきき酒競技会が行われ、腕だめしならぬ、舌だめしの人でごったがえしていた。
 かたや、通りをはさんだステージでは、面と衣装をつけた神楽太夫が、備中方言をあやつり漫談を披露。アドリブとも口上ともつかぬ軽妙な掛け合いに、集まったギャラリーも大笑い。
毎年趣向を変えてのそんな出し物もお祝ムードを盛り上げてくれる。

▲5点的中法による利き酒。色・香り・味の微妙な違いを利き分ける。意外に難しいのです、これが…。 ▲6代目蔵元、辻社長の開会の言葉 ▲原田巧杜氏のあいさつ

 そうこうしているうちに1時になり、いよいよ開場。
 会場となるのは、ビン詰めした酒を貯蔵する倉庫の中。脇の小さな入り口から入ると、内部はまるで体育館のような広さ。外光の入らないひんやりとした空気は地下室のようでもあり、異空間に迷い込んだような楽しさがある。会場内は、あっというまに人で埋め尽くされ、仕込み歌のBGMが流れる中、たちまち活気と陽気であふれた。
 今年用意された新酒は、「雄町米純米引抜」「新酒にごり」「雄町純米しぼりたて」の3種類。御自由にどうぞとばかりに樽でふるまわれる。
  客は次々に備え付けのコップを手にとり、ひしゃくで注いでいく。そのピッチたるやすごい。あれよあれよというまにコップはなくなり、ここでも蔵のスタッフが、継ぎ足し(?)に走る、走る…。

 さっそく、私も負けじとお味見開始!
新酒と聞くと、若々しくプチプチした印象が先にたつが、いざ口にしてみると、尖ったところはまるでない。雄町米のふっくらとした旨味は実に上品で、なめらかにのどをつたう。
 しっかりとした造りの中に、ほどよい香りときれいさがあり、ふわっと溶け合ったかと思うと、後はすっとおだやかにキレていく。飲み疲れない品の良さというか、心地よい絶妙のバランスというか、そんな酒の持ち味は、この町の風情にも通ずるようで実に端正な印象だ。にごりの方もとろっとしたコクがありながら、飲み口が爽やかで、こちらは女性の支持者が多かった。
 いや、それにしても、おいしさもさることながら、賑やかな雰囲気の中で飲む酒は、それだけで気分も高揚する。どの顔もほんとに幸せそう…。

 屋台の方も充実していて、うどん、粕汁、おでん、とおいしそうな湯気がたちのぼる。人数分たっぷりと用意されたもてなしに、身も心もあったまり、こちらもお腹いっぱいにごちそうになった。

▲新酒にごりに舌鼓。 ▲みんなで飲む酒はうまいのお…。 ▲熱燗はいかが?

 合間に、利き酒競技会の結果発表と表彰、御前酒クイズなどの余興をはさみ、会は約2時間でそろそろお開きに。不思議な連帯感に包まれ、なんだかあっという間のひとときだった。
 時間がくると、皆、充分満足したような面持ちで会場を後にしていく。しこたま飲んでいても、酔っぱらって長居を決め込む客はいない。そのキレのよさが実に見事で驚いた。いい酒は後を濁さず…だ。
そんな参加者たちのマナーのよさも、また来たいと思わせる人気の秘密だろう。それだけスタッフ側の演出が行き届いている証拠でもある。

 来年は、なんと御前酒創業まる200年の大きな節目の年にあたるという。地酒の伝統は、これからも多くのファンに支えられながら受け継がれていくのだろう。来年の蔵開きはこれまで以上の盛り上がりになること間違いなしだ。


2003年4月1日


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