御前酒蔵元

幻の酒米 雄町

雄町米は酒米のルーツです

雄町米といえば岡山を代表する酒造好適米(酒米)です。
雄町米は、江戸時代の末期安政6年、備前国上道郡雄町村の篤農家、岸本甚造が大山参拝の帰り道に偶然見つけた二本の背の高い穂を持ち帰り、選抜を重ねて慶応2年に育成したといわれています。

その品質の優良性から、現在全国で使用されているほとんどの酒造好適米のルーツであるとされています。特筆すべきは、100年以上も前に発見され、現在も残るただ1種の混血のない米であることです。

長稈、大粒、晩成品種で、球状の心白が出現するのが主な特徴です。また、米が軟らかで溶けやすく、濃醇な味の酒になります。

明治時代には酒米の最優良品種として全国で使用されていたそうです。開始当初の全国清酒鑑評会では、雄町でなければ金賞が取れないと言われていたほどでした。

辻本店は、雄町米に強いこだわりを持つ

辻本店では、昭和52~53年ごろまで吟醸酒に使用していましたが、一時期雄町の作付けがなくなった時期があり、使用を中止していました。栽培が復活して、昭和63年ごろより再び雄町の酒を製造を始めました。それから後も、地元の高品質な酒米を使いたいという思いから、製品を徐々に雄町米に切り替えていきました。2022年の醸造より全量岡山県産の雄町で仕込を行っており、最も強くこだわりを持っている蔵元です。

また、古くから雄町米で酒を造ってきた杜氏集団、備中杜氏の故原田巧杜氏のもと雄町米の特製を活かした酒造りを行ってきた実績があります。その技を継承し、浸漬方法などの技術も改良を重ね、軟質で原料処理が難しいとされる雄町米での酒造りを実践しています。

平成7~8年より雄町米の生産者と顔の見える関係を築いており、毎年田圃を訪れるのはもちろん、雄町米サミットなどのイベントにも参加しています。

当蔵元だけの「菩提もと」造り

試行錯誤を重ねて、蔵独自の「菩提もと」に

日本酒の「もろみ」で健全な発酵をさせるためには、多量の「乳酸」によって雑菌の繁殖を防止するとともに、数多くの優良な酵母を働かせなければなりません。その目的を達成するため、「乳酸」と「優良酵母」を大量に含んだ「酒母」をもろみを仕込む前に造ります。

「菩提もと」は別名「水もと」とも呼ばれ、「もと」の仕込み水に乳酸菌を沸かせたものを用います。具体的には、仕込み水に生米と炊いたご飯を入れて酸性にしたものを「そやし水」と呼び、これを「もと」の仕込み水として使用します。

菩提?の特徴

「御前酒菩提もと」

従来の「菩提もと」の製法をベースに先代杜氏、原田 巧が試行錯誤を繰り返して御前酒の蔵に適した製法として生み出した新しい「菩提もと」。少量の米麹を水に浸け、乳酸菌を繁殖させ「そやし水」を作る。乳酸が大量に生成された頃に一度、加熱殺菌し安全性を高めてから仕込水として使う。