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ここ美作の国にまつわるお酒の話や町の話題・蔵人のないしょ話・蔵からのメッセージなど、エッセイ風に皆様にお届けしていきます。
その四十六(2004年4月1日)

 
「のれんの向こうがわ」の連載をはじめて3年。勝山の空気に触れ、さまざまな人と出会い感じることは、「やっぱりこの町は魅力的」ということ。中でも惹きつけられるのは、古いものに遊び心と技を加えて楽しむ「職人力」とでもいうべき住まい手の感性。伝統的なものとの調和も実に見事で、町に豊かなリズムを繰り出しているのです。


 毎年3万人以上の人出で賑わう 恒例のお雛まつりが終ると、保存地区の町並みも、ほっと一息ついたような日常の静けさを取戻す。

 ここに来ると、さっきまで時速100キロで高速をぶっとばしてきたのがうそのように、平成から江戸の時代にタイムスリップしたような不思議な懐かしさを覚える。寸と尺で造られた町家のたたずまい、瓦の銀黒に漆喰の白、そして格子戸の茶色…。
 そういえばある作家が、江戸の町は雀の羽色をしているとなにかの本に書いていた。保存地区の町並みもそれに似たシックな無地色。「保護色」は人の心を落ち着かせてくれるそうだ。
 だからなのか、各家々の軒先を飾る「のれん」の色彩のコントラストは一つひとつどれもが鮮烈だ。この季節、川原に咲き乱れる菜の花の黄色も、この町で見ると妙に感覚の奥深くに染み込むのである。

 勝山を訪れる観光客の数はここ数年うなぎ上りで、県の町並み保存地区に指定された昭和60年当時から比べると現在は約7倍、年間15万人を数える。
古いだけの町は、一見退屈そうにもみえるものだが、この地区を歩いていると、それぞれに住まいへの愛着と確かな暮らしのリズムが感じられ、それがとても愉しい。

 「のれんの向こうがわ」に見え隠れするそんな豊かな空気が、町全体をぬくもりのあるものにしている理由だろう。景観の美しさだけでない、懐かしさと軽快さが混ざりあった生活や営みの匂いそのもの、それが町の面白さでもある。

▲のれんが風にゆれると、まるで訪れる人を誘っているかのよう。 ▲旭川の河原から眺める町の裏側も美しい

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住民主役で「楽しい町を」
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 住民主導による「町並み保存事業を応援する会」も旗揚げされて今年で9年め。日よけのためにと最初、会長である行藤公典さんが、友人でもある町内在住の染織家、加納容子さんに注文したのれんは、一枚また一枚と次々に町内の軒先を飾り、その数すでに88枚。96年からは、町から制作費の補助が出るようにもなり、今ではなくてはならない 町の「顔」になった。

 お雛まつりも、一般の観光事業とはまったく違うスタンスから始まり脚光を浴びた。観光客にお金を落としてもらおうなんて気はみじんもない。「自分たちが楽しみたい。気持ちのいい町にしたい。ただその思いがあっただけ」と町の人たちは一様に口を揃える。
 豊かな自然と歴史文化、そして住み慣れた家。それを誇りに思うこの町の人々が、自分たちの暮らしを演出し、訪れる人へもてなしの心を 通わせてきた。それが結果的に、よそにはない個性的な町づくりにつながった。

 町並みと並行して流れる旭川の清掃も、住民が自ら率先して精を出す。取水された用水には今でも鯉が泳ぎ、水質が保たれていることに驚かされる。
 一方で、空き家になった古い町家を貸し出し、ギャラリーや飲食店に再利用する動きも高まりを見せた。勝山に暮らすことイコールものづくりへとつながり、他所から新たにやってきた大工職人やアーティストたちとの交流も盛んだ。


▲のれんを作っている加納さんの「ひのき染織工房」 ▲空き家を改造したギャラリー野田屋。クリックすると「のれんの向こうがわ」の野田屋さんの記事がご覧になれます。

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新たな地域ブランドをめざして
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 地元の素材を活かし、住まい手の「職人力」をフルに発揮していく、そんな暮らし方は、もともと日本人のスタイルでもあったはず。ある意味あたりまえでまっとうな衣食住の形が、今逆に新鮮でもっともパワフルなのかもしれない。

 今、保存地区では、行政と民間(住まい手)が互いに役割を分担し、新たな「勝山ブランド」の創造に向け事業を進めている。
 具体的には、町内の旧家から寄贈された 古いしょうゆ蔵(明治中期の建物)に新たな息吹を吹き込み、ここを勝山の生活文化の拠点として、空間(ミュージアムや工房、サロン)を立ち上げるというもの。
 ものづくりをひとつの柱に、木工や建築、地酒と地元食材とのコラボレーション、音楽や演劇、地域の伝統工芸と職人文化の復興などと連動し、人と人、人ともの、そして人と自然が自由に交感できる場をめざす。

 伝統的なものに「遊び心」を加え、日常と非日常を行き来する。そこではきっと、懐かしいものがモダンに、古いものがおしゃれに、そして日本的なものが国際的に輝きを放つに違いない。
 勝山の、ひいては日本の地場財産に光りをあて、田舎暮らしの中の「豊かな価値」を流通させていく試み。それは、この小さな山間の町勝山の人々が、「かたち」として見せてくれた生き方でもある。

 そんな町づくりの2ステージめは、来年4月に開幕する。


「勝山しょうゆ蔵」
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詳しくは「勝山しょうゆ蔵プロジェクトHP」
をご覧下さい

 http://www.homepage.mac.com
/katsuyama_kura/

2004年4月1日


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